いまさら聞けない墓石クリーニングで使う洗浄液の種類

石材店様など、墓石クリーニングを業務として取り入れている方に向けて書いています。
この記事にたどり着いたあなたは

  • 墓石クリーニングで使う洗浄液についての知識に自信がない。
  • 強い薬、弱い薬ぐらいの認識しか無い。
  • 強い薬を使って墓石の艶を無くしたり、変色させたりしてクレームになるのが嫌だからクリーニングを取り入れない。

そんな事をお考えではないでしょうか?

この記事では墓石クリーニングに使う洗浄液について

  1. 酸性・アルカリ性などのpHによる分類
  2. 一般の方が使えると紹介されている洗浄液
  3. シミ抜き剤について

の3ブロックでお客様に説明できる十分な内容をお伝えします。

目次

どんな汚れを落とすのかによって洗浄液を使い分ける

洗浄液の説明をする前にその洗浄液はどの汚れに対してアプローチをするのかを知っておいていただきたいです。簡単に分類するとこんな感じです。

  • 無機質な汚れ(水垢・エフロ)⇒酸性洗剤
  • 有機物質(カビ・苔・樹液など植物の汚れなど)⇒アルカリ性洗剤・中性洗剤・ベンザルコニウム・次亜塩素酸
  • シミ(サビ・油じみ)⇒サビ抜き剤・シミ抜き剤

クリーニングする墓石を見て、その汚れが水垢なのか?カビや苔なのか?判断できるとお客様への説明もしやすくなります。

pHによる分類

洗浄液の分類をする時によく出てくるのがこのpH(ペーハー/ピーエイチ)です。
“酸性洗浄液は良く落ちるけど石にダメージがある”
なんとなくそんなイメージはお持ちでは無いですか?

まずはその「酸性」「中性」「アルカリ性」の分類で洗浄液を説明していきます。

画像出典:石鹸百科
https://www.live-science.com/honkan/basic/chishiki02.html

《予備知識》酸性洗浄液はアルカリ性の汚れを落とし、アルカリ性洗浄液は酸性の汚れを落とします。

酸性洗浄液 pH0~6

酸性洗浄液はアルカリ性の汚れを落とします。
具体的には水垢・エフロなど、無機質な汚れを取るのに有効です。
問題なのは石材自体が弱アルカリの無機物である。汚れにダメージを与えるのと同じように石材にもダメージを与えてしまうという事です。

酸性洗浄液については、少々気を付けなくてはいけない部分もあるので、別記事で書きました。

あわせて読みたい
墓石クリーニングで酸性洗浄液使うならこれぐらい知っておこう 墓石クリーニングで使用する酸性洗浄液の説明 ご存知の方も多いと思いますが、酸性洗浄液は石材を傷めるので使用する場合はそれなりの知識が必要です。 ココでは酸性洗...

中性洗浄液 pH6~8

中性はpH7ですが、pH6~8は中性洗浄液と分類されます。石材へのダメージが少なく使用上の安全性も比較的高いのが特長です。

界面活性剤が進化した結果、中性洗浄液でも比較的高い洗浄効果が出せるようになり、私も以前はコレをメインにしようとしていた時期もありましたが、やはりその洗浄効果は石材店様や私のような石材クリーニング専門業者が業務として行うクリーニングと言うよりは、エンドユーザー様が日常メンテナンスで使用する用途に向いています。

仏具店などの店頭で売られている一般の方向けの墓石用洗浄液も中性のものだと思います。

アルカリ性洗浄液 pH8~14

酸性が酸性と弱酸性に分けられているのと同じようにアルカリ性もpH8~11がアルカリ性、pH11~14が強アルカリ性です。

酸性洗浄液が無機質の汚れに効果があるのに対してアルカリ性は有機質の汚れに効果があります。

具体的にはカビ・苔・お供えされた花など植物に起因する汚れ、鳥のフンなどです。

知っておくべきことは「アルカリ性洗浄液も石材にダメージがある」という事です。洗浄前の水打ちはするべきですし、洗浄後は中性洗浄液による中和が理想です。

中和剤としてのアルカリ洗浄液

この中和についてですが、アルカリ性洗浄液には酸性洗浄液を中和させるという重要な役割を担っている場合があります。”いる場合がある”というのはアルカリ洗浄液ではなくて専用の中和剤を別商品としてラインナップしているメーカーも多いからです。

ココでは詳しく書きませんが、中和は墓石クリーニングにとって重要な要素です。建築用の石材のノウハウでは足りない墓石ならではのノウハウも存在します。

一般のお客様向けの洗浄液

上記しました通り、一般の方にオススメ出来る洗浄液は基本的に中性洗浄液です。お客様に「普段はどんな洗浄液を使って掃除すればいい?」と聞かれる場合も中性洗浄液をオススメしています。

それとは別にYouTubeなどで一般の方向けに紹介されている裏技的な洗浄剤があります。

それが塩化ベンザルコニウムと次亜塩素酸ナトリウムです。

塩化ベンザルコニウム

まずば塩化ベンザルコニウムです。製品名では”オスバンS”や”ヂアミトール”といった名前で薬局で買購入可能。商品によって濃度が違うようです。

次亜塩素酸ナトリウム

塩素系と言われ”キッチンハイター”が製品名としては有名ですね。
「混ぜるな危険」がついたものです。酸性洗浄液と混ざると塩素ガスが発生します。注意してください。

使用方法

どちらもかなり薄めた状態で塗布してブラシで磨いていきます。汚れが浮き出てきたら水で流すを繰り返します。

注意事項

さて、どちらも洗浄後、しっかり水で流す必要があります。そうしないと錆が発生してしまうからです。下記のような参考文献もあります。

0.1%塩化ベンザルコニウム液は鉄片に対して30分, 0.02および0.05%次亜塩素酸Na液は鉄片および亜鉛片に対して10分, 銅片に対して1時間の浸漬で錆の発生が認められた. 

各種消毒剤の金属腐食性と殺菌効果に及ぼす腐食の影響

https://ci.nii.ac.jp/naid/10010830566

私は自分が現在使用しているアルカリ性洗浄液の方が汚れ落ちが良いので、使用していませんが一般の方には紹介するのも一案かもしれませんね。錆が発生するリスクがある事をご理解いただいた上で最後にちゃんと大量の水で洗い流す注意事項を忘れずにお伝えください。

シミ抜き剤

石材に発生したシミを抜く仕事は技術が必要です。いくつかのノウハウがありますが、重要なのはシミ抜き剤をいかにシミに反応させるかです。

一般的にシミ抜き剤を湿布するのが有効とされ、私も有効だと思いますが、反応が終わった状態でいくら湿布をしてもその効果には疑問が残ります。それよりも更にシミ抜き剤を塗布してブラッシングする方が効果的な場合もあります。

知っておくべきことはシミ抜きには大変手間がかかる場合があるという事。そして取れないシミもあるという事です。過去に私も取れないシミを何とかして取ろうとして石材にダメージを与えてしまった事があります。
特に外からもらったサビをはじめとしたシミはだいたい取れますが、石材内部から発生したシミがは完全に取れない事がままあります。また、取れたとしても再発する可能性も高いです。

サビ抜き剤

まずはサビ抜き剤。特長はそのニオイです。硫黄臭がします。
そのニオイのイメージとは裏腹に中性で石へのダメージが少ないです。

錆は石材内の鉱物に酸化物が付いた状態です。サビ抜き剤はその酸化物より強い力で石材内の鉱物に結合していきます。置き換わる感じですね。

サビに反応すると紫色になるという特長がありますので、サビ抜き剤をシミに付けて紫に反応したらサビ、そうでない場合はサビではないシミです。

この紫が更に黒く変色して石材内に留まる事があります。
その場合はその黒くなったシミを除去する必要があります。

油シミ抜き

上記しました通り、シミにサビ取り剤を塗布して紫の反応が見られない場合は別のシミなので、シミ抜き剤を替えて施工します。

錆でなければ油じみである事が多いですが、植物性の油と機械油とで使うシミ抜き剤が違ったりすることがあります。
やはりこれもシミとシミ抜き剤をいかに反応させるかがポイントです。

まとめ

いかがでしたか?簡単にまとめますと…

  • 酸性洗浄液は水垢に有効だが、石材にダメージを与えるから注意が必要
  • 中性洗浄液は日常メンテナンス向け
  • アルカリ洗浄液はカビや苔に有効
  • 中性洗浄液以外でエンドユーザー向けには塩化ベンザルコニウムや次亜塩素酸ナトリウムが有効とされている。サビの発生に注意。
  • シミ抜きにはサビ抜きと油シミ抜きがある。シミ抜きは時間がかかり難しく、取れない事もある。

これだけ説明できれば少なくともお客様とお話しするのには十分だと思います。
自社で施工するけど自分は施工担当ではなく石材店の営業担当だという方、私のような外注を使って墓石クリーニングを提供している石材店様や仏具店様。
このような知識をベースに是非墓石クリーニングをPRしてみてください。

墓石クリーニングは顧客満足が非常に高いサービスです。積極的に提案してみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次