誰も語らなかった墓石コーティングの基礎知識

 墓石コーティングに興味はあるものの、その知識をどこで習得すれば良いか分からない。そんな方の為に墓石コーティングの基礎知識を下記のようなブロックで書いていきます。


・カーコーティングとの違い
・石材コーティングならではの施工方法
・石材コーティングの目的は撥水ではない事
・コーティングのムラについて
・コーティング剤の種類

目次

カーコーティングとの違い

既に一般化しているカーコティングはイメージが出来ている方が多いです。墓石コーティングを説明する上でカーコーティングとの違いを説明するとイメージしやすい部分があります。

カーコーティング

 カーコーティングは車のボディの上に塗装があり、その上にクリア層があり、その上にするコーティングです。ボディが水を吸うわけでは無く、ボディを保護するというよりは塗装を保護するイメージになると思います。
 コーティングを多層化して膜厚をアップするやり方もあるようですが、膜厚を厚くするとクラックや剥がれの原因になるので、カーコーティングは薄く塗り伸ばすのが基本のようです。

石材コーティング

 石材には小さな孔(細孔)があり、毛細管現象により雨水が入ってきます。その水が石材内のバクテリアのエサとなってカビや苔を発生させたり、サビが出てきたりします。それだけでなく水により石材は融解され劣化していきます。
 その細孔を埋めて雨水の侵入を防ぎ、石材の劣化を防ぐのが石材コーティングの目的です。もともと水を吸うことの無い車のボディにするコーティングとは大きく違う点です。
 そこを理解すると、石材コーティング施工の際、重要なポイントは石材にいかにたくさんコーティング剤を染み込ませるか。という事がご理解頂けると思います。

コーティング剤の使用量の違い

 カーコーティングは薄く塗り伸ばす事が求められますが、石材はいかに染み込ませるかがポイントです。そうなると使用するコーティングの量は圧倒的に石材コーティングの方が多いです。

質問

石塔一式に使用するコーティング剤の量
車1台に使うコーティング剤の量
どちらが多いでしょうか?

 表面積で言えばカーコーティングの方が施工面積は広いと思います。
 もちろん車も墓石も大きさは様々ですし、石種によって吸水率も違いますから一概に比べることは難しいですが、概ね石塔一式の方が4~5倍使う感じです。
 石材コーティングの価格を決める時にカーコーティングの価格を参考にすることがあると思いますが、コーティング剤の使用量は石材コーティングの方が4倍も5倍もコーティング剤を使う事は知っておいてください。

石材コーティングの施工方法

 薄く塗り伸ばすのが基本のカーコーティングに対し石材コーティングの場合はまず石材にコーティング剤を染み込ませる塗り工程があります。塗ったあと、浸透させるため少々時間を置いてから拭き取ります。
 天然素材である石材は当然場所によって浸透度合いにバラつきがあります。コーティングを良く吸う箇所はたくさんのコーティングを塗り込まなくてはいけませんし、あまり吸わない箇所は余分なコーティングを除去しなくてはいけません。十分に浸透させる為に二度塗りは必須だと私は思っています。

撥水が目的ではない。

andreas NによるPixabayからの画像

 細孔が埋まっていれば水は浸透しません。表層に被膜があれば紫外線劣化からも保護してくれますし、艶のアップも十分です。

 カーコーティングの場合、表面に玉のような水弾きをさせると流線形のボディがどんどん水と水に含まれた汚れを落としてくれます。走り出せば風も水や汚れを吹き飛ばしてくれます。
 また、雨の日にも車は使うので水弾きをしているというのはコーティングが効いている感が高く、ユーザーの満足を得られます。

 近年の墓石の場合は水が溜まらない工夫がされています。角に丸みを持たせたり、水が溜まらないように勾配を持たせるなど、工夫がなされていますが、まだ水が溜まる箇所も多く、極端な撥水はウォータースポットになる可能性もあります。

 私が使用しているコーティング剤は基本的には撥水ではなく親水・疎水の性質になっています。施工当初は撥水の性質も見られますがすぐに落ち着いてきます。

 ガラスコーティングの上に重ねるコーティングでカーコーティングのように表面を更にツルツルにして水弾きをさせるコーティング剤もあります。撥水をご希望の方はご用命ください。

どのくらいもつの

 どのくらいもつの?という質問は良くされますが、難しい質問です。

 コーティングがもっている(まだ効いている)という基準が曖昧だからです。マイストーンコーティングは10年以上耐久が基本性能です。コーティングするかしないかで10年後の石材の状況は全く違いますし、20年後はもっと違うでしょう。しかし10年間撥水や疎水しているか?と言われればそうではありません。

 上記した通り、カーコーティングと違い石材コーテイングは浸透させます。細孔に入り込んだ無機質のガラスコーティングが細孔から劣化して溶け出す事は容易な事ではありません。コーティング成分が石材内に残っているのを基準とした場合は、10年で取れると考える方が難しいのです。

 上記した無機質のガラスコーティングというのがポイントでして、世の中にあるコーティング剤のほとんどはコーティング成分の他にかなりの量の有機溶剤が含まれています。コストの問題や施工性を上げるためなど様々な理由がありますが、有機溶剤は劣化します。
 それに対しマイストーンコーティングは有機溶剤が入っていないので圧倒的な耐久性を持っています。その分、施工の難易度が高くなります。

David MarkによるPixabayからの画像

ムラの発生

 コーティングのムラが発生するのを心配される方は多いでしょう。そうならない為にはなぜムラが発生するのか?その仕組みを知る必要があります。

石の密度が一定ではないから

 上記でも書きましたが、天然素材である石材は密度と言うか吸水性が一定ではありません。同じ石でも場所によって吸う箇所、吸わない箇所があります。そこに同じ量のコーティングしか塗布しないのであれば吸う箇所はより深く浸透し、表面には残りにくくなりますから、ムラが発生します。

コーティングが劣化するから

 コーティングが均一に塗れたとしてそのコーティング剤に有機溶剤が含まれていたらどうでしょう。有機溶剤は融解していきます。水の溜まり易い箇所などは先にコーティングが劣化するでしょう。それがムラ発生の原因です。

マイストーンコーティングがムラを発生させない理由

塗りムラを発生させないから

 水を良く吸う箇所にはよりたっぷりコーティング剤を塗布し、そうでない箇所は余分なコーティング剤を拭き取ります。塗りムラが発生しないように施工しているからムラになりません。この工法はカーコーティングには無いやり方です。

劣化しないコーティングを使用しているから

 塗った当初は塗りムラが無くても有機溶剤を使ったコーティング剤は劣化していきます。劣化の仕方が均一でないのでムラが発生します。マイストーンコーティングは有機溶剤がほとんど含まれていません。だから劣化しない(コーティングのムラが出ない)のです。

 気になるのは「ほとんど配合されてないって、ちょっとは配合されてるの?」って事ですが、施工後、コーティング剤が乾燥するために必要な高純度のアルコールが5%程度入っています。

 アルコールは揮発するので、乾燥後のコーティングは有効成分が100%です。

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

墓石コーティングの種類

ワックス類

 防水というよりは艶出しの効果が高いです。
 一般家庭では玄関周りに使われる事もあるようですが、石蝋(パラフィン)を主成分にしたものは滑りやすくなるので注意が必要です。

樹脂系

 樹脂といっても様々なものがあります。フッ素樹脂・アクリル樹脂・ウレタン樹脂…炭素成分が含まれるこれらの製品は有機質になります。高寿命の製品も出ていますが、有機質である限り劣化があります。
 更にほとんどの場合、有機溶剤が多く含まれます。高寿命の樹脂が配合されていたとしても成分のほとんどが有機溶剤である場合、コーティング剤としての耐久性能はかなり下がります。

光触媒

 防汚効果が高いとされる光触媒。私個人としては施工実績が無いのですが、石材に長期間定着するものがあれば効果的かもしれません。

ガラスコーティング

 ガラスコーティングとガラス”系”コーティングがあります。
 ガラスコーティングは劣化しない無機質の成分で出来ています。ガラス系コーティングは有機溶剤が主成分でその中にガラスコーティングの成分が少し入っている感じです。
 無機質で高耐久が期待できるガラスコーティングも有機溶剤が入ってしまうとコーティング剤としては有機溶剤の耐久性能が反映され、かなり低くなってしまいます。
 有機溶剤などで希釈されていないガラスコーティングがおススメです。
 また、ガラスコーティングの中には外からの水の侵入は防ぎながらも、石材内部の水の蒸散は出来る。という繊維で言ったらゴアテックスのような性能を持ったものがあり、私が採用しているのもその性質を持ったガラスコーティングです。

止水材(水性)

 水が吸収される力を利用して石材内に浸透し、石材内のカルシウム成分と反応して防水層を形成します。墓石には凝灰岩で出来た外柵や、石塔の裏面処理に有効です。
石材内の成分によりその性能が左右されますので、有効な石種を知っておく必要があります。また、石種や施工方法によっては濃色化することもあります。

まとめ

 上記した通り、石材のコーティングは浸透させることが重要で、それがカーコーティングと大きく違う点です。カーコーティングとの違いは墓石コーティングを理解したり、お客様に説明するのに極めて重要です。
 また、私が使用するコーティングが有機溶剤を使用しない無機質のコーティングなので耐久性が高く、ムラも発生しにくい事をご理解いただけたと思います。
 最後にコーティング剤の種類も説明しました。石種にもよりますが墓石コーティングではこの中でガラスコーティングをオススメしています。
 マイストーンコーティングの特長についてはいずれ別記事で紹介していきたいと思っています。


 

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