墓石クリーニングをしていると、こんな質問をいただくことがあります。
「これはカビですか?苔ですか?」

この写真のように、石の表面に丸く張り付いているものです。
パッと答える事が出来る人は実は少ないと思います。
見た目だけを見ると、灰色っぽかったりするので、
「カビかな?」
と思ったり。
表面を少し削ってみると、中から緑色が見えるから、
「やっぱりカビではなく、光合成をする苔なんだろう。」
そう考えたりしていました。
しかし、最近改めて調べてみると、どうやらこれらは**地衣類(ちいるい)**と呼ばれるモノらしいことを知りました。
地衣類とは?
地衣類は、菌類と藻類などが共生している生物とされています。
岩や石、樹木などに付着してゆっくりと成長し、墓石にもよく見られます。
そのため、見た目だけではカビにも苔にも見えてしまいます。
私が勘違いしていたのも無理はなかったのかなと思います。
私は「カビか苔か」をあまり気にしてきませんでした
実は私はこれまで、「これはカビなのか?」「苔なのか?」ということを深く追求してきませんでした。
理由はとてもシンプルです。
カビも苔も同じ”有機汚れ”だからです
もちろん、有機汚れだからといって使う洗浄液が1種類しかないわけではありません。
しかし、まず有機汚れなのか無機汚れなのかを判断することで、使用する洗浄液の方向性が決まります。
私が洗浄方法を決める3つのポイント
「地衣類だからこの洗浄液。」
「カビだからこの洗浄液。」
洗浄液の選択はそんなに単純ではありません。
洗浄方法を決める要素は私の中では次の3つです。
① 有機汚れか無機汚れかを判断する
まずは汚れを大きく分類します。
これによって、酸性系で考えるのか、アルカリ系で考えるのかという方向性を決めます。
② 実際に洗浄液を反応させて判断する
ここが一番重要です。
実際に石に洗浄液を少量反応させ、その反応や汚れの落ち方を見ながら判断します。
例えば、
「カビだから、この洗浄液が効くだろう。」
そう思って試してみても、期待したほど反応しないことがあります。
反対に、別の洗浄液の方がよく反応し、きれいに落ちることも珍しくありません。
だから私は、汚れの名前だけで判断するのではなく、実際の反応を見ることを何より大切にしています。
③ 経験で判断する
この「反応を見て判断する」という作業を繰り返すことで、経験が蓄積されていきます。
「こういう汚れには、こちらの方が効果的だった。」
「この石種はこの洗浄液だと艶が飛んでしまう」
そんな経験が増えることで、最初の見立てもどんどん精度が上がっていきます。
その経験があると、より早く、より正確に最適な洗浄方法へたどり着けるようになります。
つまり私が洗浄方法を決めるときは、
- 有機汚れか無機汚れかという理論
- 実際の反応という事実
- 現場で積み重ねた経験
この3つを組み合わせて判断しています。
講習では…
私が行っている墓石クリーニング講習では、現時点で7種類の洗浄液をご紹介しています。
「7種類も?」
と思われる方もいるかもしれません。
もちろん、講習を受けたその日から7種類すべてを使いこなせる人はいません。
講習の時間内で全て教える事は無理です。
現場でさまざまな石種に出会い、さまざまな汚れに出会い、実際に洗浄液を反応させ、その結果を確認する。
その繰り返しによって、
「このような汚れには、この洗浄液が効きやすい。」
という経験が少しずつ積み重なっていきます。
講習では
「この種の汚れには、この洗浄液です。」
という判断基準はお伝えします。
「それを元に、考え、試し、反応を見て判断する。」
という考え方を身に付けていただきたいと思っています。
墓石クリーニングの専門家を目指すのであれば、それくらいの判断力は身に付けてほしいという思いで講習を行っています。
もちろん、一人で経験を積むには時間がかかります。
だからこそ、講習後のサポートも大切にしています。
現場で経験を積み、
「この汚れには、どの洗浄液を使えばいいですか?」
「このような反応だったのですが、どう思いますか?」
そんな疑問が出てきたら、どんどん質問してください。
その一つひとつの経験が技術となり、本当の意味で「墓石クリーニングの専門家」へと成長していくはずです。
私も、その成長をしっかりサポートしていきたいと思っています。
まとめ
今回ご紹介した丸い模様は、一般的には地衣類と呼ばれるものです。
私自身も以前はカビだと思い、その後は「緑色だから苔だろう」と考えていました。
今回改めて調べたことで、「地衣類」という名前を知ることができました。
ただ、墓石クリーニングにおいて本当に重要なのは、汚れの名前を知っていることではありません。
理論で大きく分類し、実際の反応を確認し、その経験を積み重ねること。
この3つを繰り返すことが、石を傷めず、美しく仕上げるための一番の近道だと私は考えています。


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